一人暮らしの老婦人が亡くなった。
生前は
ご主人と自転車で、
中睦ましく買い物している姿がほほえましく、
うらやましい程の仲の良いご夫婦だった。
3・11の震災の傷も癒えない春の日には、
未来ある青年が癌の病で旅立った。
今年は身近で2人のお葬式・・・。
亡くなった人たちが遺した物は、
雨で錆びついた銀の2台の自転車と、
悲しみとはかけ離れたターコイズブルーの新しい車。

(写真はイメージです。)
誰も乗らずにひっそりと、
寄り添うように置かれた銀の自転車は、
ようやくあの世で再会を
果たした夫婦の姿。
悲しいけれど、
ようやくようやく会えてよかったね。
・・・・と、祝福に替えよう。

明るい方へ、明るい方へ。
不治の病にあっても意欲的に学び、
チャレンジし続けたと云う青年が、
病気を治して運転するはずだった青い車。
「大丈夫・・・そばにいつもいるからね。」
運転する家族の傍らには、
彼がいつも寄りそっている姿が見えるよな・・・。

もっともっと生きたかった青年と、
長生きを望んでいなかったかも知れない女性が、
遺した青と銀に秘められた2つの物語。
きっと、忘れる事は出来ないだろう。